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もっと教えて耐震博士

首都直下型地震・南海トラフ地震 もしもの時の為に建物にできる備えとは?

建物はどう揺れる?構造の特徴から考えよう

最近、ニュースやSNSなどで「首都直下型地震」や「南海トラフ地震」という言葉を目にする機会が増えています。地震の規模や影響が大きいとされるこの2つの地震に、どう備えればよいのでしょうか?今回は、想定される地震の特徴や建物の揺れ方、リスクの高まりやすい構造などについて一緒に考えていきましょう!

1.首都直下型地震と南海トラフ地震、どう違う?

どちらの地震も発生すれば大きな影響が出るとされますが、その“地震のタイプ”は異なります。

■ 首都直下型地震(内陸直下型地震)
陸地の下にある活断層がズレて発生する地震で、震源が浅く、短時間で非常に強い揺れが襲うのが特徴。
都心の真下が震源になる可能性があるため、被害も局地的で深刻になる傾向があります。

■ 南海トラフ地震(プレート境界型地震、海溝型地震)

海のプレートと陸のプレートの境界で発生する大規模地震。
震源が広範囲で深く、揺れが長く続くほか、津波や地盤沈下なども併発するおそれがあります。※地震のタイプごとの特徴については、こちらの過去コラムでも詳しく紹介していますのでぜひご覧ください!

2. 建物の揺れ方と被害を受けやすい特徴

地震の種類によって揺れ方が異なるように、建物もその構造によってリスクが変わります。

✅ ピロティ構造(1階が駐車場や吹き抜け)

1階部分に壁が少ないため、揺れのエネルギーが集中しやすく、倒壊リスクが高まることがあります。

✅ 不規則な形状や開口部の多い建物(L字・コの字型など)

建物のバランスが悪いと、一部に負荷が集中してひび割れや損傷が生じやすくなります。

塔状建物・細長いビル

長周期地震動にも影響されやすい構造。揺れが長引くと大きく共振する可能性があります。

これらの特徴は、旧耐震基準・新耐震基準にかかわらず注意が必要です。

3. 建物の“見えない弱点”にも注意

前のブロックで紹介したような建物の特徴に当てはまらなければ安心…と思ってしまいがちですが、実はそれだけでは不十分なこともあります。
耐震性を考えるうえで、「建物全体のバランス」も非常に重要なポイントです。

以下のようなケースでは、気づかぬうちにバランスが崩れてしまっていることもあります。

  • 元は一体だった建物にあとから部屋を足した
    → 接合部が弱くなっている可能性あり
  • 壁を撤去して開放的な空間にリノベーションした
    → 耐震性を考慮せず施工された場合、必要な耐力壁まで取り除いてしまっていることも
  • 地震対策として部分的に補強を行った
    → 構造全体のバランスを踏まえた設計でないと、補強箇所以外に負荷が集中する場合も

こうした例に共通するのは、“全体の構造バランス”が崩れることによって、地震時の揺れに対して弱点が生まれてしまうという点です。対策を考えるときには、構造的な特徴に加えて、こうした過去の改修歴や使い方の変化も含めて検討する必要があります。

まとめ

これまで漠然と感じていた“地震の不安”が、2024年の「南海トラフ地震臨時情報」などをきっかけに、急に現実味を帯びてきたと感じた方も多いのではないでしょうか。「うちは新耐震だから大丈夫」と安心せず、構造や使い方に応じた弱点がないかを確認することが、命を守る第一歩になります。

耐震性を高めるには、建物全体のバランスを整えることがとても重要です。そのためにも、「どこを」「どの程度」補強するのが効果的かを見極めるには、専門家による診断や設計の判断が不可欠です。
まずは、信頼できる専門家に相談して、“今できる備え”を一緒に考えてみませんか?