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震度とは?知っているようで知らない基礎知識

-地震を正しく理解して、建物に必要な対策を考えよう!-

地震のニュースで「震度○」「マグニチュード○」といった言葉をよく耳にしますが、これらの違いや意味を正しく理解していますか?また、「震度5には強と弱があるのに、震度4にはないの?」「震度7以上は存在しない?」など、意外と知られていない疑問も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな震度の意味などの基本的なことから、耐震基準と震度の関係まで詳しく解説していきます!

1. 震度とは? マグニチュードとは?

地震の大きさを表す際に使われる「震度」と「マグニチュード」ですが、実は全く違う概念です。

震度とは
「震度」とは、ある地点での地面の揺れの強さを示すもの です。日本では気象庁が震度階級を定めており、0~7までの10段階で表現されます。
同じ地震でも地域や地盤の条件によって、感じる揺れ(震度)が異なります。

マグニチュードとは
一方で、「マグニチュード」は地震そのもののエネルギーの大きさ を示す単位です。
同じ地震であれば、どの地域でもマグニチュードの値は変わりません。しかし、マグニチュードが同じ地震でも、震源の深さによって揺れの強さ(震度)が変わる ことがあります。
震源が浅いと、揺れが地表にダイレクトに伝わるため、震度が大きくなる
震源が深いと、エネルギーが分散し、震度は小さくなる
小さなマグニチュードの地震でも震源が浅いと強い揺れを感じる ことがありますし、
逆に、大きなマグニチュードの地震でも震源が深いと揺れが弱く感じられることもあるのです。

2. 震度5から「強」と「弱」があるのはなぜ?

1996年の震度階級の見直しにより、震度5と6に「強」と「弱」の区分が追加されました。
この背景には、震度5以上の地震では建物の被害が増えるため、揺れの影響をより正確に示す必要があったことがあります。
例えば、震度5弱では棚の中の物が少し動く程度なのに対し、震度5強では家具が倒れる可能性が高くなるといった違いがあり、強弱を分けることで防災対策の精度が向上しました。
一方で、震度4以下や震度7に強弱の区分がない理由もシンプルです。
震度4以下は被害が軽微なことが多く、細かく分類する必要がない
震度7は最も甚大な被害をもたらすレベルの揺れを示しており、これ以上の段階を設ける意味がない
震度階級の細分化により、地震による被害状況をより正確に把握できるようになり、防災対策の精度も向上しました。
では、こうした震度と建物の耐震基準にはどのような関係があるのでしょうか?

3.震度と耐震基準の変遷

日本では過去の大地震を受けて耐震基準が見直されてきました。
これまで起きた地震の震度が耐震基準にどのように影響してきたのか見ていきましょう。旧耐震基準と新耐震基準の違いについては、過去のコラムでも詳しく紹介していますのでここでは、簡単に振り返ります!(過去に紹介している記事はこちらから)

旧耐震基準
1950年に制定された旧耐震基準では、「震度5程度の地震では損傷しない」ことが求められていました。しかし、震度6強~7の大地震に対しては十分な対策がされておらず、倒壊のリスクが高い建物が多いとされています。
1978年の宮城県沖地震では、旧耐震基準の建物に大きな被害が発生し、この基準の見直しが検討されるきっかけとなりました。
新耐震基準
1981年に改正された新耐震基準では、「震度6強~7程度の地震でも、建物が倒壊せず人命を守る」ことを目標に設計されるようになりました。
2000年にはさらなる改正が行われ、地盤の状態や柱・壁の配置なども考慮し、より耐震性の高い建物の設計が求められるようになりました。
本震だけでなく「余震」も考える必要がある
多くの人は、地震の被害というと最も大きな揺れである「本震」をイメージしがちですが、実は「余震」も無視できません。
余震は1回だけではなく、何度も発生することが特徴です。
特に、繰り返す余震の影響で建物のダメージが蓄積し、耐震性能が低下すること繰り返す揺れによって建物のダメージが蓄積し、耐震性能が低下することがあります。
例えば、最初の地震(本震)でひび割れが入った建物が、その後の余震によってさらにダメージを受け、耐久性が落ちるケースもあります。

4.余震とは? 本震との違い

余震とは?
大きな地震(本震)が発生した後、同じ地域やその周辺で引き続き発生する地震を「余震」といいます。数日から数週間、場合によっては数年単位で発生することもあります。

本震と余震の違い
・前震 本震の前に発生する地震
・本震 一連の地震の中で最も大きな地震
・余震 本震の後に引き続いて発生する地震
注意したいのは、「最初に発生した地震=本震」とは限らず、後からより大きな地震が起こる可能性がある ということです。
例えば、2016年の熊本地震では、4月14日に発生した地震(M6.5)が本震とされていました。しかし、2日後の4月16日にさらに大きな地震(M7.3)が発生したため、後からM7.3の地震が本震と判定され、それ以前のM6.5の地震は「前震」に変更されました。


「余震」という言葉の見直し
「余震」が「本震」を上回るという事態を受け、気象庁では熊本地震以降、「”余震”という言葉が最初の地震よりも小さい揺れしか来ない」という誤解を生む可能性があるとし、防災上の呼びかけでは「地震」という表現を使用するようになりました。ただし、ある程度時間が経ち「この地震は先に起きた本震の余震だ」と明らかになり、防災上のよびかけに当たらない場面での使用についてはこれまで通り余震という表現を使用しています。

まとめ

震度やマグニチュードの基本を理解すると、それらが建物や耐震基準にどう関わるかが見えてきます。大地震では本震の揺れに注目しがちですが、実際には余震も長期間続くことがあり、本震に匹敵する規模のものが発生することもあります。そのため、余震にも注意が必要であることが分かりましたね。
「震度」や「地震の種類(本震・余震)」を正しく理解することで、建物の耐震性について改めて考えるきっかけになります。
今回の内容を踏まえ、一度ご自身の建物の耐震性を見直してみてはいかがでしょうか?

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