-揺れを自然な変形で受け止める、新たな倒壊防止技術-
こんにちは!耐震博士です!
皆さん、建物の耐震性についてどのような選択肢があるかご存知ですか?「耐震」「制震」「免震」といった方法は耳にしたことがある方も多いかと思いますが、今回は新たな選択肢として注目されている「収震」についてご紹介します!
1. 耐震・制震・免震のおさらい
まずは基本からおさらいしましょう。
耐震: 建物の柱や梁、壁を強化して、地震の揺れに耐える方法。
例: ブレース、耐震壁、アウトフレーム
制震: 建物内部に制震装置を設置し、揺れを吸収して軽減する方法。
例: ダンパー(ゴム、オイルなど)
免震: 建物と地盤の間に装置を設置し、揺れを地盤から建物へ伝えにくくする方法。
例: 積層ゴム、摩擦減衰器
それぞれに特徴と適した条件があり、建物の状態や予算、目的に応じて選択されます。近年、新たな耐震技術として注目されているのが「収震」です。これまでの補強手法と何が違うのでしょうか?詳しく見ていきましょう!

2. 収震補強(SRF)の特徴とは?
「収震補強(SRF)」とは、建物の柱や壁にしなやかで強靭なポリエステル繊維のベルトやシートを巻き付けることで、建物の揺れを抑えつつ、内部構造の強度を高める補強技術です。従来の耐震補強とは異なり、地震の揺れを吸収しながら自然な変形を繰り返すことで、損傷を最小限に抑える点が大きな特徴です。
従来の耐震補強では、柱や壁が強度を保つことで地震の揺れに耐えますが、強い揺れによってコンクリートのかぶり部分(鉄筋を覆うコンクリート)が剥離し、鉄筋がむき出しになり破損することがありました。
一方で収震補強では、ポリエステル繊維のベルトが柱や壁をしっかりと拘束し、地震のエネルギーを吸収しながら、ひび割れが生じてもベルトの弾性的な復元力によって、変形後に元の状態に戻ることが可能です。このため、柱や壁の損傷を最小限に抑え、耐震性能を長期的に維持することができます。

柱にポリエステル繊維で出来たベルトを巻いて補強

ベルトの弾性的な復元力により変形後、元に戻る
3.実際の事例と効果は?
収震補強(SRF)は、すでに多くの建物に採用され、その効果が実証されています。例えば、東日本大震災の際に仙台市内のマンションでは、震度6の揺れを受けながらも、柱の表面に軽微なクラックが入った程度で、大きな被害はありませんでした。
また、同様にSRF補強を行った他の建物も、継続して使用できたという報告があり、その実績は全国各地へと広がっています。さらに、熊本地震においても、SRF補強を施した建物が損傷を最小限に抑えられたことが確認されています。
このように、大規模な地震の揺れに対しても有効な補強方法として、SRFは今後さらに注目される技術の一つといえるでしょう。

4.収震が拓く未来
収震補強(SRF)には、従来の耐震補強と比較してさまざまなメリットがあります。
揺れを抑えながら建物を守る
SRFは、地震の揺れを自然な変形で吸収しつつ、建物の損傷を最小限に抑えるため、継続的な使用が可能です。
軽量かつ短期間で施工が可能
ポリエステル繊維を活用した補強材により、建物への負担を軽減し、工期も短縮できるため、業務を続けながら補強が進められるケースもあります。
空間やデザイン性を損なわない
外観に大きな変更を加えずに補強が可能なため、オフィスビルや商業施設など、見た目を重視する建物にも適しています。
また、収震補強は地震後の余震対策としても有効であり、被害の拡大を防ぐ点も大きな特長です。こうしたメリットから、今後さらに幅広い建物に導入されることが期待されています。

収震補強に使用されるポリエステル繊維ベルト。
コンパクトな見た目ですが、しっかりと建物を守ります!
まとめ
今回は、「収震」という新たな補強方法について学びました。従来の耐震補強とは異なるアプローチで、建物の揺れを抑えつつ損傷を軽減する特徴があります。
適切な補強方法を選ぶことで、建物の安全性を高め、長く活用することが可能です。ご自身の建物に最適な補強を検討するためにも、専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
1981+では、こうした新しい補強技術についてもご相談いただけます。ぜひお問い合わせください!
※収震、SRF は構造品質保証研究所株式会社の登録商標です。
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