旧耐震とは。耐震性基準の境界『1981年』
地震大国日本では、建物の耐震性について厳しい基準が設けられており、度々耐震基準の改正が行われています。その中でも大きな転換期とされるのが1981年(昭和56年)に行われた耐震基準の厳正化です。ここでは『旧耐震基準』と『新耐震基準』の違いや見分け方、注意すべき点について見てみましょう。
1.『旧耐震』と『新耐震』の違いとは
『旧耐震』とは、1950年から1981年5月まで適用されていた耐震基準で、震度5程度の揺れでも建物が倒壊しないという構造基準として設定されていました。しかし、1978年に起こった宮城県沖地震で、建物の倒壊やブロック塀の損壊による大きな被害が見られたことにより、耐震基準が見直されました。
『新耐震』とは、1981年6月から2024年現在でも変わらず適用されている耐震基準で震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準が設定されています。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2024年の能登半島地震、いずれも最大震度7となっており、地震大国日本において旧耐震基準では想定されていない大きな地震が頻発していることがわかります。
2. 耐震基準の見分け方は?
建物の耐震基準が旧耐震基準か新耐震基準か判断するには、建築確認申請の受理日を確認します。建築確認申請の受理日は、建築確認済証や完了検査済証に記載されています。確認申請の受理日が1981年5月31日以前の建物は『旧耐震』、1981年6月1日以降の建物は『新耐震』です。
注意すべきは『竣工日』や『新築年月日』ではないことです。建物が完成した竣工日が1981年6月となっている場合でも、建築確認日が1980年6月となっていれば、旧耐震です。マンションなどの大規模な集合住宅では、建築確認申請日と竣工日に乖離があることは多々あります。特に、鉄筋コンクリート造などではコンクリートの強度を高めるための期間も必要なので、1年程度タイムラグが生まれてしまうのが一般的です。
3. 注意すべきポイント
建築資材の高騰や人件費の上昇により建築費の高止まりが続く中、中古物件市場には旧耐震基準の物件を見かけることも多々あります。旧耐震物件には、購入価格を抑えられるというメリットがあるため、購入を検討する方もいらっしゃるでしょう。しかし、購入にあたって注意すべきポイントがあります。それは建物の耐震性です。先述の通り、旧耐震物件は震度6以上の地震が想定されていないため、耐震性が不十分なものが多く存在します。そのため、まずは耐震診断を実施しましょう。耐震診断を実施することにより、その建物の耐震性が数値化され、現行の新耐震基準と照らし合わせることが可能です。耐震性が明確になれば、今後必要な耐震補強工事の費用も検討することができます。
まとめ
旧耐震物件とは、建築確認申請が1981年5月31日以前に受理された物件のことを指し、震度6以上の地震を想定せずに建築されています。旧耐震物件は購入費用を抑えられるというメリットを持っていますが、耐震性が不十分な建物が多く存在しているため、まずは耐震診断を実施しましょう。耐震性が不十分な建物に対しては耐震補強工事を施し、現行の耐震性基準を満たすことで、地震による建物倒壊や破損の危険を減らし、安全性を高めることができます。地震大国日本において旧耐震物件とはうまく付き合っていきたいものです。
文/横田 享(1981+運営事務局)