中小規模ビルの空室対策と可能性とは?
主要駅に近く、築浅、広いフロア面積を有するビルであれば、テナント探しに苦戦するということは起こりにくいでしょう。しかし、老朽化が進んだ中小規模のビルではそう簡単にいかないのが実情です。周辺で新築ビルが次々と建つ中、対抗できるアイディアを創出できなければ空室発生に繋がってしまうでしょう。築年数の経過した中小規模ビルにとって効果的な空室対策はあるのでしょうか?
1.中小規模ビルの置かれている現状とは
ザイマックス総研の研究調査によると、東京23区のオフィスマーケットでは、2024年10月期に中小規模のオフィスビルの空室率は2.76%とされています。
巨額な投資によって建設される大型ビルは、最新の建築技術や設備によって長期的な人気を維持しやすい一方で、中小規模のビルは、ある程度の需要があるとはいえ、的確な対策を講じなければ、その立地条件や築年数、設備等の老朽化などによって需要が低下しやすい傾向にあります。
2. 把握すべき市場動向とは
オフィスビル市場においては、移転先を「駅近」、「築浅」、「広い」というキーワードで検索するケースが多く、築年数が古い中小規模ビルは苦戦する傾向が強いです。そのため、駅から近く、新しく、広いテナントに人気が集中するという明暗が分かれた状態になっています。
こうした厳しい状況下において、中小規模ビルが今後生き残るためには、単なる家賃の値下げや建物のリニューアルに留まらない抜本的な改革を行うことが必要不可欠です。
3.建物価値の下落に備えてすべきこと
自社ビルの現状把握はもちろん、市場全体の動向、競合ビルの条件・動きなども把握しておくことが大切です。競合ビルの空室が少ないにもかかわらず、自社ビルの空室率が高いなどの場合は必ず何かしらの要因があります。
何も対策を講じなければ建物価値はその後も下がり続けるので、しっかりと現状を分析した上で、賃貸条件の見直しやリニューアルなど、今後の対策を検討することが重要になります。
建物は老朽化する運命には抗えず、外観が古び、内部の設備は時代遅れになっていくものです。いつまでも物理的な価値を最高水準に保ち続けることは難しいため、中小規模ビルが、空室率上昇を防ぎ、生き残っていくためには、市場ニーズにあった対策を実施し、それらに勝る付加価値を提供していく必要があります。
まとめ
解決策の一つとして、シェアオフィスやレンタルスペース、住宅への用途変更など新たな活用法の検討が挙げられます。不動産コンサルタントやマーケティングアドバイザー等の専門家の助言を受けながら、そのビルの特性や立地に合ったターゲットを探し出すことも有効です。ビル賃貸経営においては、空室対策は収益確保の要です。特に中小規模ビルでは従来のテナント探しにとどまらず、新たな需要を掘り起こす柔軟な発想が必要です。市場のニーズを的確に捉え、持続可能な経営戦略を構築することが重要です。
文/樫村 和哉(1981+運営事務局)